2004年5月アーカイブ

古書店と言えば、神田神保町が本場中の本場。つづいて本郷だろうか。この古書店は、そうした意味からは、ちょっと外れの小石川、こんにゃく閻魔(源覚寺)の近くにある。が、昔からそばを通るたびにとても気になる存在だった。古い建物の格調と、店先にうず高く積み上げられた本の山が、ある種の迫力またはオーラのようなものを発散させている。とかくこの手の古書店は、要塞のように客を拒む雰囲気になりがちだが、二階窓辺のゼラニュームの彩りが建物の印象を和らげ、客に親近感を感じさせている。良い古書店だ。

【場所】文京区小石川2丁目23あたりです。

バグっぽいパグ

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神社の境内でファインダーを覗いていたら、足下にゴロゴロゼイゼイと妙な音が聴こえてきた。ふと下を見ると、コロコロのパグが僕の両足の間に上半身を突っ込むようにして、僕を見上げていた。不細工な顔だがなんとも愛嬌がある。頭をなでるてあげると、仕事を終えたような顔をして、また、ゴロゴロゼイゼイと音を発しながら、股の下をくぐり抜けてノロノロと歩いて行った。このパグ、歩く速度が亀のように遅い。写真を撮りながらぶらりぶらりと歩を進めているのに、しばらくすると、また、ばったり出会ってしまった。「あ、そうだ、FrameDust さんに犬の写真って言われてた」ことを思い出した。そこで1枚。この1枚、番外編です。

【場所】文京区後楽2丁目あたりです。

「一九三一年 金婚記念」と印されている。みみずく家という煙草屋さんの屋根に立つ広告灯だ。最初に目にしたときは、もうびっくり。度肝を抜かれた。あたりの風景を完全に支配していた。それから随分と時間が経つが、この広告塔はちっとも古びない。最初に見た時のまま、すっくと立っている。抜群の存在感はいささかも衰えていない。背後に見える再開発ビルが束になってかかっても、この広告塔1本の個性と重みにはかないそうもない。
それにしても、この格調高い塔のまわりに、よくもまあこんなにゴチャゴチャと標識や電柱、電線を配したものだと思う。行政ってのは無粋きわまりないな〜。あきれる。

【場所】文京区後楽2丁目あたりです。

五丁目角のタナカ・レナ

風景は光の具合で七変化する。ここは表通りを歩いていると自然と目に入る位置なのだが、いつもは気にもとめず通り過ぎる。薬局の建物の角というだけで何の変哲もない。が、そこに光という天才がちょっとだけ色彩と陰影を添えると、突然、普段とはまったく異なる風景が浮き上がってくる。これは、季節、時間、天候、対象物などの条件が、偶然にぴたりと揃った結果だ。シビアに言うと、この場所に同じ光が差すことはもう二度とない。一期一会という言葉は、風景にもあてはまるんですね。てなことを考えた後にこのポスターを見直すと、レナさんのポーズが涅槃仏に見えなくもない、と思いません? もしかすると、この奥に、レオパレスという、見える人には見える寺院が在るのかも知れません...。う、怖わっ。

【場所】文京区本郷5丁目25あたりです。

この猫は、飼い猫なのか?野良猫なのか? きっとどちらでもないと思う。この界隈で産まれ、誰からともなく餌をもらい、この界隈で生きているのだろう。こんな、野良になりきっていない猫が、本郷には結構いる。それにしても、この猫、このお宅の門柱の上で、ここが定位置だと言わんばかりにぴたりと決まっている。しかし、大通りから1本裏に入っただけで、こんな静かな、ひと昔前の空気に満ちた空間が残っているなんてね〜、興味は尽きません。あ、関係ない話しですが、僕はどちらかというと犬派です(^^;

【場所】文京区本郷5丁目あたりです。

加藤薬局で映画撮影中

どうでもよいことですが、昨日から、以前このサイトで紹介した加藤薬局を使って、ドラマか何かの撮影が行われています。おかげで初めて店内を見ました。これがまた激渋! 漢方を主体にした薬局だったようです。

春日通りを文京区役所から本郷三丁目に向かって行くと、真砂坂(東富坂)を登りきった少し先の左手に、ファイヤーハウスというバーガーショップがある。ファイヤーハウスと言えば、文京区の"アメリカン"シリーズのなかでも筆頭にくるくらいに有名だ。ボリュームのある本格的ハンバーガーを食べさせてくれるショップとして知られている。僕のまわりにもファンは多い。が、実は、僕は、ここのハンバーガーも未体験なのである (ここは店構えを見てるだけで満足ってとこがあって...)。ただし、ちょっと言い訳がましいが(^^; ここの姉妹店・マーキュリーのほうには足繁く通った。家庭料理的定食を良心価格で食べさせてくれる店で、味付けもとても良く、感覚的にも洒落ていて、家中みながファンだった。ところがどうしたことか、こちらは残念なことに短期間で閉店してしまった。ホントに残念。心から復活を願っている。姉妹店がそうだったから、母体となるファイヤーハウスの味は推して知るべしである。近々かならずおじゃましま〜す。

【場所】文京区本郷4-5-10 / TEL 03-3815-6044。ファイヤーハウスの全景を見る

小菊、玉屋、紫小町。湯島の江戸あられは、その名にも風情ありだ。戦災で焼け野原になった湯島に「竹仙」は建てられ、当時の姿そのままに今日にいたっているのだという。渋くて、うっかりすると見逃してしまいそうだが、気がつくともうお終い。何もかもが美しく、見入ってしまう。人の手と自然が、毎日ミクロン単位で木肌や金属や石を削り磨き、ぬくもりのあるナチュラル仕上げを完成させている。店内の江戸あられはすべて秤売り。瓶のなかから掬い出されたあられは、ぱりぱりと口のなかで小気味よくはじける。

【場所】文京区湯島4丁目バス停前 / TEL 03-3811-3268
【余談】ご主人の顔立ちは、浮世絵のなかの歌舞伎役者の雰囲気を感じさせた。地下鉄大江戸線が通ってからというもの、トラックが通ると店全体が揺れるようになったという。確かに揺れる。このお店も、春日通り路幅拡張計画にひっかかっている。いずれ取り壊しになるかも知れないと思うと「修理することもできずにいる」と、困り顔でおっしゃっていた。この宙ぶらりんな感じ、解る気がする。

湯島に、昭和9年に建てられたという古いビルがある。外壁に装飾が施され、ちょっと大袈裟に言うと、ヴィクトリアンハウスな感じで優雅だ。写真はそのビルの通用門の一部を切り取ったものだ。通用門がこうだから、正面玄関はもっと凝っていたに違いない。が、それを見ることはできない。このビルの1階が、今はコンビニ・サンクスに占拠されているのだ。コンビニがいけないとは言わないけれど、都内にもそう多くはない優雅なビルに、プラスチックの看板がペタペタグルリと巻き付いているのは、なんとも雰囲気ぶち壊しで情けない。なんせヴィクトリアンハウスなんだから、せめてナチュラルローソンに対抗するような、渋めのオーガニックサンクスとかにでも変身できないものだろうか?

【場所】文京区本郷3丁目38あたりです。
【追記】このビルの全体像です。このビルは、春日通りに面しています。春日通りは、道路幅を拡げる計画があるようで、このビルも、実は遠からず取り壊されてしまうのかもしれません。情緒のある建物が次々に壊されてしまいます。

なんだか気になる看板でしょ? レトロでアジアンで和風で...なんせ金魚だし(^^; この看板を見ると、その先に何が待ってるのか気にならない人なんて居ません。吸い寄せられます。なんたって金魚坂ですからね〜。あんな坂こんな坂ありますが、金魚坂は滅多にあるもんじゃありません。しかもコーヒーと金魚、それに葉巻なんて組み合わせは、もうほとんど反則技。人を好奇心のかたまりにしてくれます。
好奇心に駆られて細い路地を進むと、その先に現れるのは、想像とはかけ離れたコテージ風の茶房なんです。そして、なんと葉巻を買うことができます。信じられません。本郷の古書店や古美術店をまわった後に立ち寄り、珈琲を飲みながら葉巻をくゆらせ、金魚談義でもして、時代の交錯気分を味わうのもよいかもですね。

【余談】 母体は、江戸時代からつづく筋金入りの金魚屋さんでした。金魚の番付(相撲の番付そっくり)があったなんて、ここで初めて知りました。女将は気さくで素敵な方です。江戸です、ここは...。

金魚坂のウェッブサイト:http://www.kingyozaka.com/

東大正門近くの角を曲がると「オオッ」と思わせる建物がある。有名なので、あえて紹介するまでもないのだが、万定[まんさだ]フルーツパーラーというお店だ。建物もさることながら、問題はこの看板である。日照や風雨に晒されつづけた結果だろうが、素晴らしい出来だ。美しい。人間がどれだけ頑張ってみても、これほど意図を感じさせない美しさを作り上げることはできない。わざとらしいレトロが多いなかで、これは貴重だ。この看板と建物を、今日まで大切に使ってこられた御店主に敬意を表したい。

【場所】文京区本郷6-17-1 / TEL:03-3812-2591
【余談】果物店併設のフルーツパーラーとして大正3年の創業という。現在ではパーラーのみ営業している。カレーやハヤシ、フルーツジュースなどが有名だ。私は食い道楽ではないので、トライしたことがありませんが、そのうちに...とは思っています。このお店で使われているレジ機が昭和9年製とかで、これも有名ですね。いまでも動いているのかしらん? 動いてるうちに写真撮っておきたいな〜。

菊坂下には長屋が多く、そこではまだ「住人は皆家族」のような生活ぶりを目にする。そういった生活は僕には無理だ、と思いつつも羨ましかったりする。その人達の生活を支えるお店のひとつがこのお菓子屋さん(看板には確かに菓子店とありました)だ。が、商品を見るかぎり、これはコンビニに近い。長年にわたり「家族」のリクエストに応じてきた末の品揃えがこうなったのだろう。きっと、品揃えに無駄がなく、欲しい物が不思議と手に入る魔法のお店なんだと思う。それにしても、電柱を店に取り込んだ魔法もすごいと思いません?

【場所】文京区本郷4丁目28あたりです。

旧町名・森川町に古い煙草屋がある。そのショーケースに古びた写真が、飾るというよりも置いてあった。写真は、その煙草屋のカウンターのなかに年配の女性が座っているところを撮ったものだ。そして乾燥したほおずきや松ぼっくりが添えてある。想像でしかないが、女性は娘時代、その界隈でも評判のお洒落な看板娘だったに違いない。そして、ほおずき市の立つ頃には欠かさず浅草へ行き、鉢を手にしてもどるのが慣わしだったのではないだろうか。その粋な浴衣姿に近所の男衆が見とれていた情景が目に浮かぶ。おそらくは、この女性の人生が終焉を迎え、女性の人生の一部だった煙草屋も、同時に、ごく自然に幕を閉じたのではないかと思う。写真は僕にそう語りかけてきた。
あ、松ぼっくりですが、これは女性が大切にしていた庭の松がつけたものです。きっと...。

【場所】文京区本郷6丁目4あたりです。

ワイエスな萩

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実は昨日まで山口県に滞在していた。そして雨の萩を訪ねた。城下町全体がしっとりとした静寂につつまれ、なんとも言えない情緒に溢れていた。いたる所に土塀や板塀がめぐらされ時代劇のセットさながらだ。それらは保存の対象であり、記念館などになっているところもあるが、普通に人が生活しているところも多い。これがすごい。「明治維新なんてほんの数年前のことさ」といった感じさえしてくる。写真を撮ったこの家だが、「廃屋か?」と思って近づいてみると、ガラス窓の向こう側に洗濯物が干してあったのには驚いた。唐突にアンドリュー・ワイエスの画を想った。

【余談】僕はアンドリュー・ワイエス(Andrew Wyeth)というアメリカの画家が好きで、彼の作品(2本マストの帆船の絵)のコロタイプ複製を部屋にかけている。彼は経年変化の美しさをとても大切にする人で、作風はまるで日本の墨絵の手法で描いたかのように渋い。見ていると気分が落ち着いてくる。

壱岐坂下交差点近くに、昔コーヒーハウスだった気になる建物がある。

その1990年頃の写真を見ていただきたい。かるく装飾が施された外壁、焦茶色に塗った煉瓦壁にオフホワイトで屋号(BELNE)。なんだかサンフランシスコの学生街にでもありそうな雰囲気で、とても気に入っていた。

が、すくなくとも4年ほど前からは営業をやめ、建物を所有する会社のミーティングルームとして使われていたらしい。そんな使い方はもったいないので、誰かが引き継いでカフェとして再出発してくれないかな〜と思っていたのだが、つい先日前を通りかかると、「マンション建設計画」の看板が貼られていた。所有していた会社が倒産したらしい。仕方がないとは言え、これを壊してしまうなんて惜しい。

【場所】文京区本郷1丁目24 あたりです。
【余談】でもな〜、Papa's Cafe なんかになったら、きっと、場所といい建物といい渋くて、洒落た集客力のあるカフェになると思うんだけどな〜。ついでに、バークレー発祥の老舗 Peet's Coffee & Tea が入ったりすると、もう最高なんだけど、日本でのオペレーションから手を引いたばかりだからダメだろうな〜。

【5月20日 追記】ついに解体工事の準備が始まってました。夕方には、建物がボードで完全に覆われ、外から見ることはできなくなっちゃいました。現場の写真を見る

旧壱岐坂を上りきったところから本郷通りに出るまでが大横丁通りと呼ばれ、小じんまりとした商店街になっている。
昭和の中頃までは、周囲のお屋敷や旅館をお得意にして、繁盛していたものと思われるが、時代の流れで、それらの多くが会社のビルなどに建て替えられ、今では、お昼時を別にするとあまり活気がある商店街とは言えなくなっている。

そのなかほどに、加藤薬局が当時の繁栄を象徴するかのように立っている。残念ながらもう営業はしてはいない。この横丁に活気が溢れていた頃(昭和)に建てられたものだろうが、この建物のそばを通るたびに、僕の頭のなかでは勝手に大正モダーンという言葉が響く。

誰かがカフェかブックストアにでもしてくれたらお洒落なのに、と思うのだが。

【場所】文京区本郷2丁目24 あたりです。
【余談】壱岐坂というと、大多数の人が、東京ドームのところで白山通りにぶつかる広い坂道(新壱岐坂通り)を思い浮かべると思う。僕もそう思っていた。ところが、実は、坂の途中にある東洋学園のところを斜めに入る狭い坂道が、昔からある壱岐坂なんだそうだ。

団子坂のアメリカン'60s

千駄木駅を出て団子坂をすこし登ったところにハンバーガーショップがオープンしていた。アメリカ片田舎のルート66沿いに古くからあったような顔をしていて、思わず足が止まった。千駄木や谷中は古い江戸情緒を残した下町の代表格だが、以前から妙に先進的な感覚の店(閉店してしまったダウンタウン・ロッカーズマートなどが先鞭をつけたと思う)がオープンし、それがカモフラージュしたかのように周囲にうまく溶け込む不思議な町でもある。その例がまたひとつ増えた。

【場所】文京区千駄木2-28-7 北川ビル1F / TEL: 03-3822-5767
【余談】このお店で食事している時にオーナーらしき人の話が聞こえたのだが、シクスティーズを想わせるエクステリアやインテリアに使用している小物・大物の大半は、ネットオークションで手に入れたのだという。しかしこの徹底ぶり、一見の価値ありだ。

本郷通りを挟んで東大の反対側に落第横丁と呼ばれる細い通りがある。両側に古い飲食店が軒を連ねている。昔は東大生がたむろして繁盛してたんだろうな〜、と思わせる面影はあるが、今は畳んでいる店も目につく。そこにおや?と思わせる店ができた。屋号はNeo Sitting Room!。和の匂いを発散させながらの無国籍な佇まいがよろしい。隣の中華屋さんの看板が妙にミスマッチしていたりもする。このお店が引き金になったのか、通りの奥のほうには、ウインドウにオールド・エレクトリックギターを飾った、ちょっと洒落たバーもできた。横丁通りの息吹を感じる。再開発ではなく再生の息吹を。

【余談】70年代初めの話しになるが、雄丸(オスマル)という服飾デザイナーが青山三丁目のル・バザールというブティック界隈に棲息していた。ブラジル人だが日本語を話せたので、顔を合わせると立話しするようになっていた。彼がデザインする洋服には、どこかに必ず和服からとった生地が使われていた。が、ややもすると見過ごしてしまいそうなほど、それはこなれた使い方をされていた。そしてとにかく渋かった。西洋人が興味を示す「和」はとかく歌舞伎的「和」だが、彼の興味は能的「和」にあった。山本寛斎さんが一世を風靡していた頃だったし、アメリカかぶれしていた僕の目には雄丸の「和」が新鮮だった。
最近、街中で、そんな穏やかな「和」を目にする機会が確実に増えている。文化財として「和」を保護するのも結構だが、こういった日常生活圏での「和」の再生のほうが、よほど「和心」を継承しているように思えて応援したくなる。

【場所】文京区本郷5-30-2 / TEL: 03-5842-8280



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