オックスフォード便り(15)

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ここまでに、英国の運河とナローボートについて、何度か紹介させていただきました。そして、産業革命の遺産ともいうべきそれらを、形をかえながら現在に活かしている、英国の文化の豊かさや奥深さに感心した...という内容の記述をしてきました。が、実は、手放しで感心してばかりはいられない...というのが今日のエントリーです。

中央の写真は、オックスフォードの家々の窓辺で目にした貼り紙ですが、最初は「何かな? 遊覧船の宣伝?」などと思っていました。が、これが大間違いでした。オクスフォード便り(11)で紹介したナローボートの住人たちに聞いてはじめて知ったことですが、こちらのサイトにも書いてあるように、いま、オックスフォードの貴重なボートヤードが、デベロッパーに買収され、再開発されようとしているのです。ボートヤードというのは、ボードを係留・陸揚げして、メンテナンスや修理などを行える施設のことで、これが無くなると、ナローボートの維持管理が極めて難しくなり、「運河+ナローボート」というシステムと文化そのものが大打撃を受けることになります。目にした貼り紙は、その再開発反対の意思表明だったわけです。

左の写真が、そのボートヤードですが、既にフェンスで囲われ、使用できない状態になっていました。そして、右の写真は、やはり、そのボートヤードの近くで撮ったものですが、かなり大規模な再開発によるマンション建設が進んでいました。そこには、昔、製鉄工場があった...と聞きました。とにかく、今後は、運河沿いの空間は、再開発すれば、ウォーターフロント住宅・施設として高値で販売できるため、デベロッパーが放っておかない...ということになり、こんな風景が増えるのは間違いなさそうです。
こうしてみると、運河とナローボートという素敵な文化も、実は、決して安泰なものではなく、それを育んだ土壌からやせ細ってゆく...という危機に瀕してもいるようです。

【追記】中央写真の貼り紙の画像はこちらにあります。
【場所】Oxford Canal, Oxfordです。

コメント(26)

もったいないです(´;ω;`)
にっくきデベロッパー(`ω′)
噛み付いてやりたいです(`ω′)

>アンさん
こんばんわ。ま、ね〜、土地所有者が誰に土地を売ろうが自由なんでしょうが、そこはね〜やはり、土地の伝統とか文化とか、それこそ地霊とか…そんなものを大切にしたいですよね〜。英国は平坦で土地が広いですから、何もここでなくても…と思うんですが…。せめて、ボートを陸揚げするスペースだけでも確保できたらよいな〜と、気持ちだけですが、応援してるんですよ。

右の写真、素敵なブラックのナローボート。アクセントのラインと船名はゴールドでしょうか。とても恰好が良いです。書かれたBABUSHKAという文字から、ケイト・ブッシュの同名の歌を思い出しました。

関係が冷え切ってしまった夫婦。どちらの心が変わってしまったのか、その詩は明らかにしていません。そして妻は、夫を試す手紙を書きます。偽名での恋文を送るのです。夫はかつて情熱的に愛し合っていた妻と同じ類のものをその手紙の送り主から見出します。詩はその後の夫婦がどうなっかたも明らかにしてくれません。おそらくは妻がよく捲いていたのでしょう、babushka, babushkaとただ繰り返されるのみです。

babushka号の白髪の人には、ああ昔はよかった、なんて言ってほしくないですね。
妄想的なコメントを失礼いたしました。

>M.Niijimaさん
いつもコメントをありがとうございます。このボートの舵を握る人ですが、サンフランシシコあたりの、昔はちと名前の通ったミュージシャン…という感じで、雰囲気ありました。だから、ボートが地味ってのも分かる気がしました。
ところで、船名からケイト・ブッシュに飛ぶとは思いもよりませんでした。超意外な展開です(^^; この時に、そのことがピンと来ていれば、関連を聞いてみたんですけどね〜。残念です。
ケイト・ブッシュ本人がBabooshkaについて語っているビデオがありますね(http://video.1st-game.net/youtube/v_64sqReQ14Kc.html)。きっちり聞き取れないのですが、妻の邪悪な妄想から事が始まること…バブーシュカがロシア語で「おばあさん」のことだけど、それは後日知ったことで、この歌のなかでは名前として使った…などと語ってますね。なんだかこの曲、欲しくなってきました(^^;

あれだけNational Trust運動が活発な英国であってもこうした動きがごりごり進められてしまうのでしょうね。
マンチェスターに人工スキー場が建設中で、Bathのショッピング・モールが街の景観に似合わないからと壊されて再開発される、というような話が錯綜する、というのが現実、ということでしょうか。

>nsw2072さん
僕は、政治的なことにひじょうに弱いんですが、オックスフォードのこのあたりでは、こうした再開発中や再開発後の住宅街(やや団地)をよく目にしました。が、一方で、僕が宿泊した建物は、リスト(市?郡?などは不明です)掲載の建物とかで、オウナー(老歯科医)は、どこを触るにも、申請書を6通も書いて、それが受理されるのを待たなければならない、しかも施工は認定業者に限られている…とこぼしていました。これは個人所有のごく一般的なフラットなんですが…。
例の発電所しかりで、広範囲に見ますと、やはり錯綜している…としか見えないことは起こりますでしょうね。ま、英国に関する予備知識もない短期間滞在からの推察は危険ですが…。

あまりに当たり前に存在していた・・・
その存在を失って気づく・・・愚
人と人の間・・・景観・・・
何処もおなじということか・・・寂

>chatnoirさん
おはようございます。もう「バカは死ななきゃ…」って言葉は永遠ですね(^^; 人は、その前に知恵を使うってことが、できないのでしょうか…。そして、表現形こそ違っても、何処も同じ…のようですね。嗚呼(^^;

こんばんわ(^^)
その通りですよね。
伝統や文化って大切ですよね。
新しい建築物も
もともとの街の景観を損なうと
悲しくなりますよね。
イギリスにも日本のように
地霊や物に宿る付喪神のようなお話しありますか?
ボート文化が生き残れるよう
私もささやかながら応援しています!

>アンさん
こんばんわ。「イギリスにも日本のように地霊や物に宿る付喪神のようなお話しありますか?」とのことですが、よく知らないんですよね〜(^^; なんせ無駄に歳くってますから…(^^;
でも…ですね。「東京の地霊」という本がありまして、そのなかで、著者(鈴木博之氏)「この本は、イギリスの同種の本に触発されて書いた」といったことを述べています。ということは、イギリスのほうが、先も先ってことになります。そして、土地の記憶って、やはり大切だと思います。


 私も全く詳しくはないのですが、National Trustの活動や、例えばShakespeare TrustやWordsworth Trustのそうした保存運動があれだけ盛んなのにはやっぱりベースになる文化の裏打ちがあるんだと思うのですが、それがどこに準拠していて、それに対してどんな反応が現れているのか、とても興味を持ちましたねぇ。
 これは英国ではなくて豪州の話ですが、100年だったか150年建った建物は(なにしろ歴史がありません)再開発するにしても外側を残さなくてはならないという決まりがあるというのです。確かに、そうして中を近代的設備にリファービッシュしているオフィスビルなんてものがある一方、やたら不審火で火事になっちゃう、という例も報じられます。つまり使えなくして再開発してしまうというわけです。
 John Lenonの育った家をNational Trustが買い取って全くもとの状態に復旧しようとしているという話を聞いたことがあります。
 制度が先だとは思えませんから、民衆の意識から始まるんでしょうか・・?
 だらだらとお邪魔して申し訳ありません。

>nsw2072さん
文化財や自然の保護というものは、おっしゃるように制度が先なんてことは無いわけですから、文化に支えられているのだと思います。ただ、そういった精神といいますか、文化遺伝子が、過去に向かう方向では在る程度引き継がれ生きているのに対し、将来に向かう場合に、うまく引き継がれていないのでは?と想像します。そのギャップが錯綜を生む原因なのかな?と思いますが、どんなものでしょうか…。

October 18, 2003のエントリーですが。
60年代後半のアイドル内藤洋子(喜多嶋洋子)が出演したNHK教育の特別番組「ネィティブアメリカン・祈りの大地」の備忘録です。
---------------------------------------------------------------
大地を大切にしなさい
大地は親に貰ったものでなく
あなたの子供から借りているのです
大地は先祖から受け継いだのではなく
未来の子供たちが貸してくれたものだから
---------------------------------------------------------------
今や開発業者も多国籍企業となりつつある状況で土地に由来する歴史的コンテクストは無視される傾向にあるのでしょうね。上海に進出したMも施設名で地元の顰蹙を買ったとか、、、。

「東京の地霊」おもしろそうです(^ω^)
そうゆう話がすきなもので・・・
すみません・・・(^^;)(;^^)
探してみます!
土地の記憶って素敵な響きです。
いつも素敵なお返事ありがとうございます♪

>iGaさん
ネイティブアメリカンの言葉、素敵ですね〜芯を突きながらも…。ところで、昨日、長徳さんに「上海のM」について伺ったばかりでしたよ(^^;

>アンさん
あ、タイトルから想像を膨らませないでくださいね。地霊とは言うものの、内容は地籍(土地の履歴のようなものですね)中心で、決してカルトではありませんからね(^^;

ありゃりゃ(^^;)(;^^)
てっきりそのての本かと・・・笑
でも、それはそれで面白そうです!

>アンさん
でしょう…。でも、これはこれで面白いです。僕はまだ読破できずにいますが…(^^;

このエントリーはとてもつらく感させるのだけれど、みなさんのコメントのおかげで歌や本に、想像が拡げられていきました。この文化にはそれだけの深さと力があるのだとも、改めて思います。
日本で反対運動が起きたらどんなふうになるだろうかと考えると、色と数とデザインがむしろ景観を破壊するような張り紙やポスターで、このあたりは埋めつくされるでしょう。
逆に、破壊者たるディベロッパーの仮囲いも、こんなに控えめで美しくはないでしょう。開発の結果につくられるものさえ、きっとここにはべつのかたちで気持ちのよい場所を作り上げて、これは日本ではできないとぼくたちをうらやましがらせるでしょう。
金儲けのための開発の方法にも、ぼくたちの及ばないものがあるのでしょう。破壊さえその中に取り込むような、すでにそこにあるものを大切にするための文作法があるというわけですね。日本には、もっと前から、そういう作法があったのだろうに。
まずは、ケイト・ブッシュ、鈴木博之さん、内藤洋子をどこかで発掘しなきゃあ。

>tamさん
こんにちわ。どこでも、やはり、そう理想的に物事は運ばないようですね。しかし、おっしゃいますように、同じ再開発風景でも、どこかの国とは決定的に違いますね…。撮っていながら、そのことが、はっきりと意識できていませんでした。そうか!…という感じです。そこが相当に重要なポイントなんですね!
ところで、僕には、「ケイト・ブッシュ、鈴木博之さん、内藤洋子(ネイティブアメリカン)」が「玉井夕海さん、玉井一匡さん、LOVE GARDENさん」と翻訳されてみえていました(^^;

はじめまして。

オックスフォード運河でもマンション建設ですか。
私の知人でグランドユニオン運河沿いに住んでいる人がいて、
その人がかつて所有していたボートヤードが同じように住宅に再開発されるということで、
反対運動をしているようです。

オックスフォード運河は6年前にクルーズしましたが、
グランドユニオンに比べて水路が狭い分、
こぎれいにまとまっているような気がします。

>ナローボーダーさん
こちらこそ初めまして。コメントをいただき、ありがとうございます。なんと、URLをたどりましたら、「英国運河の旅」(http://item.excite.co.jp/detail/ASIN_4882026651/)などの著者・秋山岳志さんご本人でいらっしゃいますね! ビックリしました(^^; 実は、今回の旅で、すっかりナローボートに興味を覚え、購入しよう…と思っていた本でした。
ところで、オックスフォード運河沿いでは、この旧ボートヤードのすぐ近くでも、すでに、古い製鉄所跡でマンション建設が進んでいました。
英国の景気は上向きだ…と聞きましたが、そうなると、自然やこうした歴史的資産をも、食いつぶす力が働くというのは、特に英国の古い町並みを見た後では、残念に思えてなりませんでした。あまりに素晴らしい運河沿いの風景とナローボートで生活をする人々に触れ、日本のお手本であって欲しい…という勝手な思いを抱いてしまった…というところです。
僕は、学生時代からヨットを趣味にしていましたので、ナローボートにすっかり惹かれてしまいました。これを機会に、今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします。

拙著を気にかけていただき、恐縮です。

イギリスの運河沿いの再開発については、
形態や規模などによって一概に善悪は判断しかねますが、
日本のウォーターフロント再開発との比較では、
建築物はおおむね低層で、
いわゆるコンテキストの中に納まったものが多いように思われます。

もっとも、ケースによっては再考を促すべきものも少なからずあることは想像に難くないですが。

こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます。

イヤ〜これは、大変なことになっていますね。
ボートヤードの危機は今も、すすんでいるのでしょうか。護岸整備ならいいものの、ナローボートのお手入れ環境が奪われていくのかな〜、そして、失って初めて後悔するのかな〜。それじゃあ日本と同じになっちゃうね。この注意喚起標識が切実ですね。 イギリスの伝統が、日本からも関心を持って事態を見守っていること伝わるといいですね。 大変だ与

>ナローボーダーさん
僕が滞在していましたごく一般的なフラットでも、手を加えようとすると、多数の機関の許可が必要…とのことでしたから、新築の場合でも、申請から許可を得るまでは、かなりの煩雑な手続きが必要な国なのだろうことが想像できました。
ただ、このオックスフォードの場合は、開発計画に反対しているわけではなく、ボートヤードを消滅させないでくれ…そのスペースを確保しながら再開発をすすめてくれ…という活動をしている…とのことでした。が、それもかなり困難だ…とも聞きました。
しかし、部外者の僕ですら、ナローボートという素晴らしい文化を存続させるためにも、ボートヤードは確保すべきだろう…などと感じた次第です。

>菊坂の与太郎さん
そうなんですね〜。ボートを手入れするスペースが無くなるってのは、ほんとに困りものでしょうね。このボートヤード確保のための活動をしている人のひとりにお会いしたわけですが、僕が写真を撮って、ブログにアップするだけでも助けとなる…と言ってくれて、とても親切にボートなどの撮影をさせてくれました。切実のようでした…。



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